コロナ禍にオープンした寺田倉庫のWHAT MUSEUM。開館展の「INSIDE THE COLLECTOR’S VAULT, VOL.1−解き放たれたコレクション展」は、高橋龍太郎コレクションとA氏のコレクションで構成された。高橋龍太郎コレクションは「描き初め」をテーマとしてコレクションの原点である合田佐和子、草間彌生、会田誠の作品を中心に、近藤亜樹、今津景の大作、さらに鈴木ヒラク、村山悟郎、大山エンリコイサム、梅沢和木、毛利悠子、川内理香子、水戸部七絵、佃弘樹、DIEGO、BIENら新しい世代、傾向の作品を含め約30点を出品した。

中でも野澤聖による《obsession −蒐集家の肖像−》と題する高橋龍太郎をモチーフにした作品が異彩を放った。

描き初めかきぞめ
– コレクションはいつまでも若い- 

高橋龍太郎

『死者はいつまでも若い』はアンナ・ゼーガースが描くナチス台頭期の革命の物語だ。スパルタクス団の蜂起に参加して、殺された死者がいつまでも若いという謂いは、殺されてもたえず補充されていく大衆の生命力を表している。

コレクションもたえず補充されている限り、その若さを保ち続ける。ただしコレクションにはコレクターの年齢や経済力の限界がいつでも付きまとう。自分の嗜好が硬直化して時代と乖離してくれば、そのコレクションはその役割を終える。だが、美術館の収蔵作品のように事後的に評価の定まったものだけを購入するのであれば、それはコレクションとは呼ばれない。(少なくとも私はそう考えてきた。)コレクションにはコレクターの生きる証しが反映されてなければならないからだ。

描き初め。WHATの描き初めである。

今回の展覧会は今まで展示されなかった若い作家たちのストロークの強度と、先行く作家たちの新しい展開に焦点をあててみた。

コロナ禍の新しい時代、高橋龍太郎コレクションがいつまでも若いか、皆様に検証して頂ければ幸いである。

初出:展覧会場掲出パネル挨拶、WHAT MUSEUM 2021年

会場:

WHAT 展示室1階、2階(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10)

会期:

2020年12月12日(土) – 2021年5月30日(日)

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