WHAT MUSEUMにおける2回目のコレクション展「日本現代アートのDNAを探る」は、日本の美意識の源流を想起させるモチーフ、日本の伝統の再解釈、再構成や、日本画や書の表現の追求など33作家の作品を選び多面的に構成した。「ART de チャチャチャ」は高橋龍太郎による日本の作家たちへのエールであり、一元的な日本文化礼讃への少しの注意喚起も含むタイトルである。1階にはほの暗いスペースに井上有一、操上和美、杉本博司、岡村桂三郎の作品が浮かび上がる展示。2階は小谷元彦の木彫作品にはじまり、見附正康の精緻な絵付大皿、束芋の映像、華雪の書のインスタレーション、さらに「もの派」など多様な表現の作品が展示された。
現代アートと「いき」
高橋龍太郎
日本の現代アートは西欧の美学と日本の様式美への憧憬から成り立っています。その憧憬のあまり、悪い場所とまで言われる苦界からなかなか抜け出せていません。
九鬼周造はその主著『いきの構造』で日本独特の感覚「いき」の語源は生、息、行、意気 とした上で、「いき」について「媚態」と「意気地」と「諦め」の3つの要素から成り立つとしました。それを分かりやすく、「垢抜けして(諦)、張りのある(意気地)、色っぽさ(媚態)」と言いかえてもいます。
「媚態」 この緊張しながら決して一元化せず続く二元的態度こその色っぽさ。これが日本独特の「いき」の本質です。しかもそれは苦界だからこそ生きていたのです。
日本の現代アートも西欧の美学と日本の様式美に対して、付かず離れずしかも色っぽく 「いき」な関係でいられるかどうか。今の苦界から抜け出せるかの鍵は、このあたりにありそうです。そして今回の展覧会の見所こそ、まさにこの点にあるのです。
初出:展覧会場掲出パネル挨拶、WHAT MUSEUM 2023年
- 会場:
WHAT MUSEUM
- 会期:
2023年4月28日(金)-2023年8月27日(日)
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